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最高裁判所第一小法廷 昭和47年(オ)1211号 判決 1973年3月22日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一点、第四点および第五点について。

約束手形を裏書によつて取得した者が、取得の際、右手形が請負代金の前渡金として振り出されたものであり、かつ、請負人の財産状態が悪化して仕事の完成が期待しえないことを知つていたときには、手形法一七条但書にいわゆる「債務者ヲ害スルコトヲ知リテ手形ヲ取得シタルトキ」に当たると解すべきである。したがつて、原審が適法に確定した事実関係のもとにおいては、被上告人は訴外久保喜代子に対し、手形法七七条、一七条但書により本件手形金の支払を拒絶しうる旨の原審の判断は、正当として是認することができる。所論は、右と異なる見解に基づき原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)を非難するか、または、原審の専権に属する事実認定を非難するものであつて、いずれも採用することができない。

同第二点について。

所論は、原判決の結論に影響のない点について、原判決の違法をいうものにすぎない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第三点について。

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして肯認しえないものではなく、その認定の過程に所論の違法は存しない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の証価、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下田武三 裁判官 大隅健一郎 裁判官 藤林益三 裁判官 岸 盛一 裁判官 岸上康夫)

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